審査をAIに任せたら、事業のスピードが上がった。
株式会社aMiは、全国のフォトグラファーとクライアントをつなぐ出張撮影マッチングサービスを運営している。
同社がMiAI面接を導入したのは、中途採用の効率化ではない。プラットフォームに登録するフリーランス写真家の「品質審査」──お客様に安心してご紹介できるかを見極めるプロセスに、AIを活用するという新しい試みだ。
面談枠の不足はフォトグラファーの稼働開始を遅らせ、撮影案件を受けられない状態を生んでいた。それは審査の非効率ではなく、売上機会の直接的な損失だった。
「効率化」ではなく「機会損失の解消」を目的にAI審査を導入し、併用運用を経て全面移行に至った藤井さまに、その過程を伺った。
導入の背景と課題
Q. MiAI面接導入前、どのような課題があったのでしょうか?
aMiでは、全国のフォトグラファーの方々に提携いただき、お客様とおつなぎする撮影マッチングサービスを運営しています。フォトグラファーさんが稼働して初めて売上が立つビジネスモデルなので、提携前の審査にかかる時間は、そのまま事業の機会損失に直結するんです。
導入前は、Webサイトから応募を受け付け、ポートフォリオ審査を行い、そのあと担当者がオンラインで面談をして判断するという流れでした。ただ、面談を担当してくれていた方の対応枠がどうしても限られていて、応募から面談まで数週間かかってしまうことがありました。
その数週間のあいだ、フォトグラファーさんは動けない。撮影案件があっても受けられない。うちとしても売上機会を逃している。フォトグラファーの方は複数のサービスに登録されている方がほとんどなので、待たせているあいだに他社で稼働を始めてしまうケースもあったと思います。面談のボトルネックは、審査の問題にとどまらず、事業全体のスピードを制約していたんです。
導入の決め手
Q. MiAI導入の決め手は何でしたか?
もともと代表の松元さんと知り合いだったこともあり、「うちの課題にフィットしそうだな」と感じて導入を決めました。
当社の審査は、一般的な採用面接とは少し性質が違います。「優秀な人を選んで採用する」というよりも、お客様に安心してご紹介できるかどうかをスクリーニングする──いわば品質審査なんです。加点方式ではなく、「この方は問題なく稼働できるか」を確認するプロセスですね。
実際に使い始めて、そういうスクリーニング用途にMiAIがすごく合っていると実感しました。質問設計の柔軟さがあるので、当社独自の視点でしっかり見極めることができています。
導入と運用の実際
Q. どのような流れで導入を進められましたか?
最初は人の面談とAI面接を併用していました。AIが出した評価を、担当者がもう一度動画をピックアップして確認し、自社のデータベースに評価を入れ直すというダブルチェック体制ですね。
ただ、やっていくうちに人の評価とAIの評価にそこまで大きな差がないことが見えてきたんです。「じゃあ全部AIでいいじゃん」という話になりました。今も担当者が動画を確認するプロセスは残していますが、AIの評価を大きく修正するようなことはほとんどなくなりましたね。パッと見の印象で気になるところだけ確認するような運用に自然と移行しました。
フォトグラファーの反応
Q. フォトグラファーの方々の反応はいかがでしたか?
実は以前の面談形式のときは「時間が取れないよ」といったマイナスの声があったんです。フォトグラファーの方って本業の撮影で忙しいので、わざわざ面談の日程を調整するのが負担だったんですね。
AI面接になってからは、そういった不満がなくなりました。自分のタイミングで受けられるので、むしろ「もっと早く稼働したい」というポジティブな声につながっています。フォトグラファーさんにとっても、審査待ちの時間は案件を受けられない期間ですから。お互いにとっての機会損失が解消された形ですね。
複数のサービスに登録して比較されている方も多いので、「応募したらすぐに審査が進む」というスピード感が、選ばれるサービスであり続けるための要因にもなっていると思います。
導入後の成果──「効率化」ではなく「機会損失の解消」
Q. 導入後、具体的にどのような成果がありましたか?
いちばん大きいのは、リードタイムです。以前は応募から面談まで数週間かかっていたのが、ほぼゼロになりました。
フォトグラファーさんが早く稼働できれば、それだけ撮影案件を受けられる。お客様の依頼にも早く応えられる。売上機会の損失が、構造的になくなったと感じています。
数字にも明確に表れていて、新規登録者のうち面談まで進められていた方は以前と比べて1.5倍になりました。
もうひとつは、面談を担当してくれていた方のリソースを、より価値の高い業務に振り向けられるようになったことです。
今はその方に初回稼働時のサービス説明──撮影の段取りや、到着確認の方法、写真の納品フローなど、実際にお客様と接する場面に直結する内容の説明をお願いしています。スクリーニングはAIに任せて、フォトグラファーさんとの関係構築は人がやる。結果として、サービス全体の品質向上にもつながっています。
「採用面接」ではなく「品質審査」──AIの新しい活用領域
Q. 御社では「採用面接」ではなく「審査」としてAIを活用されていますが、その違いについて教えてください。
弊社の場合、一般的な中途採用とは構造が違うんです。「合格・不合格」で人を選ぶのではなく、プラットフォームに登録するフォトグラファーさんがお客様に安心してご紹介できる方かどうかを確認する審査です。
実際にやってみて改めて分かったのは、このスクリーニングという工程においては、人がやるかAIがやるかで精度に大きな違いがなかったということです。
マッチングプラットフォームの品質審査って、おそらく多くの企業が「人がやるしかない」と思い込んでいる領域だと思うんです。でも、やってみたら十分にAIで回せた。これはうちにとって大きな発見でした。
運用を通じて得た学び
Q. 運用してみて気づいたことや、工夫されている点はありますか?
ひとつ挙げるとすれば、フォトグラファーの方に「これはちゃんとした審査なんですよ」と認識してもらうことの大切さですね。AIが相手だからといって、適当に答えてしまう方がまだ少しいらっしゃいます。本来しっかり答えれば問題なく通過できるはずの方もいると思うので。
ただ、見方を変えれば、相手が人でもAIでも誠実に向き合えるかどうかは、お客様の現場に出るフォトグラファーさんに求められるプロフェッショナリティの一つでもあるんですよね。
今後はアナウンス機能を活用して、面接の冒頭で「この審査結果がマッチングに反映されます」ということをしっかりお伝えしていく予定です。初回稼働時の説明内容をスライドや動画として組み込むこともできるので、審査とオンボーディングをシームレスにつなげていきたいですね。
今後の活用構想
Q. 今後、MiAI面接をどのように活用していきたいですか?
今はどちらかというとスクリーニング──足切りに近い使い方なんです。でも、もう少しフォトグラファーさんごとの個性や強みを可視化できるようになるといいなと思っています。「この方はホスピタリティがすごく高い」「この方はスピード感のある対応が得意」といった特性がAIの評価から見えてくると、マッチングの精度も上がりますよね。
足切りだけではなく、フォトグラファーさんの強みを活かしたより良いマッチングにつなげていけたら、さらに事業としてのインパクトが大きくなると考えています。
同じような課題を持つ企業へのメッセージ
Q. 同じような課題を持つ企業に向けて、メッセージをお願いします。
マッチングサービスやプラットフォームを運営されている企業様には、特に共感いただけると思います。フリーランスの方との提携、クラウドソーシングやスポットワーク系のサービスでも、登録者の審査にかかる工数とスピードは共通の課題ではないでしょうか。
「採用面接のAI化」という文脈はよく語られるようになりましたが、プラットフォームの品質審査にAIを使うという発想は、まだあまり知られていないかもしれません。効率化の話ではなく、事業の機会損失をなくすための手段として、ぜひ一度検討していただきたいです。
「面談が詰まると、案件が止まる」──藤井さまが語る課題は、人事の工数問題ではなく、事業成長のボトルネックそのものだった。
aMiが示したのは、「採用面接をAIに置き換える」こととは異なる、もうひとつのAI活用の道だ。プラットフォームに登録するフリーランスの品質審査という、「人がやるしかない」と思われてきた領域で、AIは確かな成果を上げている。併用運用を経て「全部AIでいいじゃん」という確信に至るまでのプロセスは、審査のスピードが事業のスピードに直結するすべてのマッチングプラットフォーム事業者にとって、示唆に富む事例だろう。