短期間に集中する選考でも、候補者一人ひとりと向き合えるように。
DeNAグループから創設された独立系ベンチャーキャピタル、デライト・ベンチャーズ。
同社のベンチャー・ビルダーファンドでは、年間約1,000名規模の起業家候補と向き合いながら、起業前後のスタートアップ立ち上げを支援している。
一方で、短期間に応募が集中するなかで、書類だけでは見えにくい「起業家としての資質」をどう見極めるかが課題だった。生成AIの普及で書類からの判断はいっそう難しくなり、かといって、すべての候補者と人が面談するには限界があった。
そこで活用したのが、AI面接サービス「MiAI面接」だ。
今回は、ベンチャー・ビルダー事業を率いる坂東さまに、導入背景と効果を伺った。
会社・事業について
Q. まず、デライト・ベンチャーズ様のベンチャー・ビルダーファンドについて教えてください。
デライト・ベンチャーズには、大きく2つのファンドがあります。シリーズA前後のスタートアップを対象としたファンドと、これから起業する人・起業したばかりの人を対象としたベンチャー・ビルダーファンドです。今回MiAIを活用したのは、後者の起業プログラムの選考です。
ベンチャー・ビルダーファンドでは、起業家とともにゼロから事業を立ち上げます。すでにある事業へ投資する一般的なVCと違い、共同創業に近い形で事業づくりそのものに関わるのが特徴です。
プログラムには1回あたり200〜300名が応募し、年間ではおよそ1,000名の起業家候補と向き合っています。
導入の背景と課題
Q. 選考では、どのような点を重視されていますか?
私たちのプログラムは、事業内容がまだ固まっていない段階の方も多く対象になります。領域は決まっていても、具体的な事業はこれから、というケースも少なくありません。
そのため、選考で見るのは事業アイデアだけではなく、その人がスタートアップの経営者としてやっていけるかどうかです。ただ、人の見極めは難しく、本来は一定期間伴走しないと分からない部分もあります。それでも採択前に年間約1,000名を絞り込む必要があるため、最初の選考でどう見極めるかが重要になります。
Q. MiAI面接導入前、どのような課題があったのでしょうか?
面接の負荷が非常に大きいことです。募集期間は1〜2か月設けているのですが、応募が締切間際に集中し、最終日だけで全体の約3分の1が来ることもあります。
プログラム開始までの限られた期間に、書類確認・面接・次選考の判断を一気に行わなければなりません。30分の面接を1日に十数件こなすこともあり、かなり消耗していました。
Q. 書類選考だけでは判断しづらい、という課題もあったのでしょうか。
ありました。近年は、生成AIの普及によって、応募フォームやエントリーシートの文章が非常に整いやすくなっています。一見魅力的でも、内容に深さがあるのか、本人の考えがどこまで入っているのかが見えにくくなっています。
補足的に2分間の動画提出も求めていましたが、添付率は十分でなく、内容も人によってばらばらでした。ピッチをする人もいれば、自己紹介に近い人もいる。参考にはなりますが、考えをインタラクティブに深掘りすることはできません。
書類だけでは見えない。動画だけでも深掘りできない。かといって、すべてを人が面接するには負荷が大きい。そうした背景からMiAI面接の活用を検討しました。
導入の決め手
Q. MiAI面接には、どのような役割を期待していましたか。
選考のできるだけ早い段階で、つまり人が会う前に候補者の考えを深掘りし、誰と面談すべきかを見極めることです。短期間で多くの面接をこなす必要があるなかで、フィルタリングのための深掘りをAIに任せられれば、大きな工数削減になります。
もちろん、AI面接だけで合否を決めるわけではありません。候補者の回答をAIが深掘りし、その結果をレポートで確認する。担当者は、どんな考えを持ち、どこに強みや懸念がありそうかを把握したうえで人の面談に臨めます。MiAI面接は、その一次情報の収集とフィルタリングを担う位置づけです。
Q. 導入前に不安や懸念はありましたか。
一番気になっていたのは、AIが候補者の回答を適切に深掘りできるかどうかです。機械的に質問するだけでなく、こちらが聞きたい方向に沿って掘り下げてくれるか。たとえば営業職なら、成果を定量的に確認したい場面もあります。
ただ、それが過度に機械的だと候補者体験を損ないます。電話の自動音声のように振り分けられる体験は避けたい、という懸念はありました。候補者にとってデライト・ベンチャーズとの最初の接点のひとつでもあるので、違和感がないかは気にしていました。
導入と運用の実際
Q. どのようにMiAI面接を運用していたのでしょうか。
前回のプログラムでは応募者全員ではなく、書類を見て「次に進めたい」「もう少し聞かないと判断しづらい」、かつ面接が重なりそうな候補者を中心に、個別にMiAI面接のURLを送りました。案内は候補者ごとにメールで送る運用をしていました。
生成されたレポートは、各プロジェクトのリードや私が確認していました。通知ごとに見るのではなく、週に2〜3回まとめて目を通す形です。
一方で、課題も見えました。起業家候補はもともとレベルが高く、評価スコアが高めに集まりやすい。合格ライン付近に候補者が密集し、白黒をつけづらい場面がありました。フィルタリングに使う以上、「この条件なら見送り」といった基準やプロンプト設計をさらに詰める必要があると感じています。
候補者の反応
Q. 候補者の方々は、AI面接を違和感なく受けられていましたか。
おおむね問題ありませんでした。「こういう面接は初めてだった」という声はありましたが、回答を見る限り、皆さんスムーズに話していて、大きなネガティブな反応はありませんでした。
ただ、AI面接ならではの改善点も見えました。人によっては話が長くなったり、質問の意図からずれたりすることがあります。人の面接なら、面接官が話を区切ったり論点を戻したりできます。候補者に端的に話してもらうためのプロンプトや機能の設計が、選考に特化して使ううえでの改善テーマだと感じています。
※編集追記:取材後のアップデートにより、質問内容や深掘りの方法をより細かく設計できるようになり、各社様のご要望に応じた面接を実施しやすくなりました。お客様の声をもとに継続的な改善・アップデートを行っている点も、MiAI面接の特徴です。
導入効果
Q. MiAI面接を導入して、どのような効果を感じましたか。
特に大きかったのは、面接業務にともなう精神的な負荷の軽減です。短期間に多数の候補者と向き合う選考では、実際の作業時間だけでなく、「また面接が大量に詰まるのか」という心理的な負担も大きいです。
他のメンバーも言っていましたが、一次的な深掘りをAIに任せられること自体が、その負担をかなり軽くしてくれます。時間が限られているなかで、たとえば10人のうち3人を人が面接すればいいとなると、気持ちの面でも大きな違いがあります。
Q. 後続の面談にも変化はありましたか。
ありました。レポートで候補者の特徴や確認すべき論点が事前に整理されるので、人の面談では基本的な情報確認ではなく、最終確認やデライト・ベンチャーズ側の魅力づけに時間を使えるようになりました。
「この人はあとここだけ確認すればよい」という状態で臨めるため、面談が非常に効率的になります。AIが合否を決めるのではなく、人がより良い面談を行うために事前情報を整える。この役割分担が、MiAI活用の大きな価値だと感じています。
今後の展望
Q. 今後、MiAI面接をどのように活用していきたいですか。
次回のプログラム募集でも活用する予定です。今後はより多くの候補者、場合によっては応募者全員に受けてもらう運用も検討しています。
前回のプログラム募集を通じて情報取得や負荷軽減の価値は確認できました。今後さらに期待しているのは、選考精度の向上です。候補者のレベルが高いぶん評価が横並びになりやすいからこそ、どの観点を重視し、どこで差をつけるかが重要になります。質問や評価基準をより精緻に設計していきたいです。
導入検討企業へのメッセージ
Q. 最後に、MiAI面接の導入を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
MiAI面接は、採用の一次選考で使われることが多いと思いますが、私たちのように、採用以外の選抜・審査にも活用できると感じています。起業プログラムやオーディションのように、選考を伴うものとは相性がよいはずです。
応募が特定の時期に集中する。書類だけでは判断しづらい。人が深掘りしなければ分からない。けれど、すべてを人力でこなすには負荷が大きい。こうした場面では、工数の削減と精神的な負担の軽減、そして短期間で実施できることに大きな価値があります。
AI面接は人の判断を置き換えるものではありません。人が本当に向き合うべき候補者に時間を使うために、面談前の情報収集と深掘りを担ってくれる。そう捉えると、活用できる領域は採用にとどまらないと思います。
今回の取材で印象的だったのは、MiAI面接が「採用面接の代替」ではなく、人が会う前の選考を支える存在として使われていたことです。書類だけでは見えづらい起業家の思考や熱量を、短期間で見極める。すべてに人が向き合うのではなく、本当に向き合うべき相手に時間を使う。今回の事例は、AI面接が採用の枠を超え、選抜・審査・オーディションなど、さまざまな「人の見極め」に活かせる可能性を感じさせてくれました。